ちょっと昔話

いつもより遅い時間に目を覚ますと、空は今にも泣き出しそうな不機嫌な色をしている。「ちえっ、昨日の天気予報は晴れると言ってたくせに」あと一回分洗濯物が残っている…。テレビをつけてぼんやりとしていたら洗濯機から完了を告げるブザーが鳴った。空を見ながらベランダで洗濯物を干していると、空から大きな水滴が落ちてきて頬に当たる。泣きたいのはこっちだよ。
雨と一緒に、雨にまつわる思い出も降ってきた。最悪の出会いだったのに…。

つもより遅く仕事が終わり駅に向かっていると、突然大粒の雨が降ってきた、今でいうゲリラ豪雨?雨宿りのために入ったアーケードから抜け出せずにいると一本隣の路地の角に控え目に『BAR』のネオンが見える。いつもの定時の帰宅時間には灯りが入っていないからか気付かなかったらしい、もちろん朝の出勤時間もネオンは疲れた街の風景に溶け込んでいる。最初は時間潰しのために入っただけだった。
薄暗い店内には少ないテーブル席とカウンターがあり、壁一面には古いレコードがびっしりと並んでいた。店内のBGMは小さく、他の数名の先客も静かにグラスを傾けている。カウンターの端に座ると、手元だけが優しく明るい白熱灯に照らされていた。おもむろにバックから読みかけのミステリーを取出して酒をサカナ(笑)にページを進めいると、いくつか離れてカウンターに座っていた彼がいつの間にか隣の席にやって来ていてうつ伏せていた。こちらの視線に気付くと顔をこちらに向けて、読んでいるミステリーのトリックを語りだし犯人までバラしてしまった。
これってナンパ?最悪のナンパだ!そのまま相手にもせずに店を出たら、やはり空は相変わらず大きな粒の雨を降らせいた。最後に出されたグラスも一口飲んだだけでいっぱい残っていたが、ネタバラしの彼に頭からぶっかける発想は生まれなかった。トリックのばれたミステリーは仕方がないが、最後のグラスに残ったアルコールを空ける事が出来なくて悔しい気持ちの方が大きい…。電車を降りて帰り道のコンビニで二本の缶ビールを買って、一人の部屋に帰る迄に空になってた事を今でも覚えている。

ふぅ、長くなった、携帯での長文はつらい。まだまだ続きがあります。もちろん全部が正しくはありません、少しだけ、創作・美化されてます(笑)